『エンジニアの知的生産術』で知識から新たな知識を生み出す方法を学ぶ

『エンジニアの知的生産術』を読みました。

『コーディングを支える技術』の著作などで有名なサイボウズ・ラボの西尾泰和さんによる、「効率的に学び、整理し、アウトプットする」(副題より)ための本です。

こういった「学び方を学ぶ」メタスキルは、これから色々なことを学んでいく上で早く身に付けるに越したことはないと思い以前から興味があり、少し前には”Learning How to Learn”というCourseraのコースを受講したりしていました。

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知的生産性の研究に10年関わってきた著者が、インプットやアウトプットに関する、脳に関する研究などの豊富な文献や、目的を達成するためのGTDKJ法といった手法、Whole Mind Systemといった読書術などについて、時にはこの本自体を書くにあたって実践的に応用した例を取りながら紹介してくれます。抽象的な概念が登場することもありますが、解りやすい例え話で説明されたり図解されているものが多く、理解を助けてくれました。

具体的な手法などについては本を手にとって頂くとして、特に自分に響いた部分について書いていこうと思います。

目的を持つことの大切さ

この本を通して気づかされたのは、何かを始めるにあたって、そもそもの目的とは何なのかという意識を持つことです。

第1章「新しいことを学ぶには」に、「大学に入りなおすべき?」という項があります。僕は高校中退後、長いブランクのあと専門学校に入ったという経歴から、アカデミックなものに憧れがあり、いつか大学に入りたいと思っていたりするのですが、そもそも大学に入る目的とは何だろうとハッとさせられました。大学の講義自体はこの本で紹介されているようにMOOCで公開されているものも多く、教材についても参考図書を読んだりすればいい話なので、ただ憧れという曖昧なもので時間とお金を費やすのはどうなのだろうと考えさせられました。

また、コードリーディング力が足りないと感じることが多いのですが、Rubyの開発者Matzの言葉として、ソースコードを読むにあたっても、全体を読もうとせず目的を持って、時にはつまみ食いのように読むことが大事だと語られています。

よく手段と目的を履き違えるなと言いますが、何をするにしても、どこを目指しているのか問うことを忘れないようにしたいと思いました。

人間の脳のメモリに頼らない

この本では国内外のインプットやアウトプットの手法について紹介されていますが、共通しているのは頭の中でモヤモヤと考えず、まずはふせんなり何なりに書き出してみるということです。まずは書き出してみると、その過程で共通点や優先度などが判定できるようになり、整理しやすくなるというものです。

人間の脳の力というのは限られていて、この本によれば作業記憶は4個しかないと主張する心理学者もいるようです。いかにそれを外部に書き出して整理することが大事かが分かります。

これは何も創造的な活動に限らず、日々のモヤモヤなども書き出してみればスッキリすることもあるので、貧弱な脳のメモリに頼らず、外部にどんどん書き出していこうと思いました。

最後に

この本で紹介されている手法を全て実践しようとすると、負荷が高すぎてインプットやアウトプット自体が億劫になってしまいそうなので、取り入れられそうなところから実践してみようと思いました。実際に著者も手法を忠実に実践するのではなく、上手く組み合わせながら自分流にアレンジされているように思います。

本の最後に、この本のタイトルが「〜学び方」ではなく「〜知的生産術」になった経緯について語られています。応用の現場で必要なのは流通した知識ではなく現場の状況にフィットした新しい知識であるからということだそうです。

知識もただのコピーに終わっては役に立ちません。これから知識を自分の血肉にすることを助けてくれる貴重な一冊となってくれそうです。まずは大量のふせんを購入するところから始めてみようと思います。

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