higeponさんがブログで絶賛されていたことで有名な『Soft Skills』の日本語版が2016/05/20に出版され、その後2016/06/01にKindle版がリリースされたのを機に早速購入して読みました。章ごとの長さが短くまとまっているおかげで読みやすく、一気に読んでしまいました。
全体を通しての感想ですが、ソフトウェア開発者として1年目の世間知らずな今だからこそ読めてよかったと思いました。ソフトウェア開発者というのは、自分次第で道を切り開いていくことのできる、可能性に満ちた職業なんだということをこの本は教えてくれたからです。
本の構成
ソフトウェア開発者の人生マニュアルという副題がついているように、この本はソフトウェア開発者向けに書かれた、ソフトウェア開発以外の部分についての著者の体験に基づいたアドバイス集となっています。キャリア、マーケティング、学習、生産性、お金、健康、精神という7つの部から構成されています。
序文からしてひきつけられた
Clean Codeなどの著者として有名なアンクル・ボブが序文を書いているのですが、その寄稿依頼の際のエピソードからしてひきつけられました。
著者は最初、序文を書いてもらうため、数十個のWordファイルで本の原稿を送ったのですが、それでは面倒だし締切日に間に合わないと、多忙なアンクル・ボブはいったん断ります。しかし、著者はそこで諦めず、出版社に掛け合い締切日を伸ばしてもらい、全体をPDFとしてまとめて送りなおします。その熱意にうたれ、アンクル・ボブは序文を書くことを引き受けます。
著者の行動力の高さを裏付ける素晴らしいエピソードだと思います。このように、この本に書かれていることは、机上の空論ではなく、著者が実践してきたことだからこそ説得力を持って響いてきます。
特に響いたアドバイス
どの章も参考になるものが多かったですが、特に僕の中で響いたものをピックアップします。
第5章 面接をハッキングするコツ
面接を受ける前に、面接する会社の開発者ブログをすべてフォローし、コメントを残していくというハックが書かれていました。本番の前に外堀を埋めてしまうというやり方で、したたかではあるけれども非常に効果的だなと思いました。
第9章 出世階段の上り方
ほかに誰もやりたがらないものを引き受けることや、何をしたかのサマリーを「週報」として上司に送る、といったアドバイスが書かれています。後者は上司に存在をアピールできるだけでなく、人事考課でも役立つ資料となると書かれており、なるほどと思いました。
また、この章を読んでいて、ほぼ日での厚切りジェイソンの出世がしたかったという話を思い出しました。階段を駆け上っていくというゲームのプレイヤーになるかならないか、そこを選ぶのは個人の選択ですが、どうせ同じ年月を働くのであれば上を目指していきたいと思いました。
第29章 ステップ1~6:1度限りのステップ
ステップを10段階においた、著者が実践している学習方法が書かれてあります。この学習方法については、別のブログ記事で紹介していますので、興味があればご覧ください。
第32章 弟子をとる:ヨーダになる
他人に教えるためにはその人より1歩先まで進んでいればいいと書かれています。
人に教えるとなると、間違いがあってはならないと思い、尻込みしてしまいがちですが、教えることによって自分の学習にも役立つのだということが説かれています。
第38章 ポモドーロテクニック
ポモドーロテクニックは、集中のためのテクニックとして捉えがちですが、1ポモドーロ (25分) を単位とすることによって作業量の見積もりとトラッキングのためのツールとして真価を発揮するということが書かれています。
ポモドーロテクニックは、何度か試してみたことはあるものの効果を実感できなかったので、そういう考え方をするのかと眼から鱗でした。
最後に
解説でまつもとゆきひろさんが書かれているように、アメリカと日本でソフトウェア開発者の待遇の違いが大きくあることもあり、この本に書いてあることを全て鵜呑みにしてはならないことは事実です。著者が成功した不動産投資の話なんかも生存バイアスがけっこうかかってる感じがあります。ただ、この本に書かれていることが全く通用しないかというとそうではないと思います。
もし僕と同じようにまだ経験の浅いソフトウェア開発者たちがこの本に書かれていることを実践していけば、日本のソフトウェア業界も変わっていき、ソフトウェア開発者という職業がもっと羨望の目を持って見られるような明るい未来を作ることもあながち誇大妄想ではないのでは、などと思いました。

- 作者: ジョン・ソンメズ
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